フェラーリは海外で何と呼ばれる?──「Prancing Horse」だけではない、跳ね馬を巡る世界の呼び名

GTNET

「Ferrari」という名前を出さなくても、クルマ好きには通じる言葉がある。

Prancing Horse。

イタリア語なら、

Cavallino Rampante。

F1の世界へ入れば、

Scuderia Ferrari。

そして熱狂的なファンは、

Tifosi。

BMWの「Bimmer」のような親しみやすいニックネームとは少し違う。

フェラーリの場合、海外で使われる呼び名の多くが、レース、紋章、イタリア文化そのものと結び付いている。

なぜ黒い馬なのか。

なぜ背景は黄色なのか。

なぜ「Scuderia」がチームを意味するのか。

そして、なぜフェラーリファンだけが特別に「Tifosi」と呼ばれるのか。

呼び名を掘っていくと、跳ね馬が単なる自動車メーカーではなくなった理由まで見えてくる。

「Prancing Horse」──英語圏で通じるフェラーリの代名詞

英語圏の記事でフェラーリを象徴的に表現するとき、非常によく登場するのが、

Prancing Horse

だ。

直訳すれば「跳ねる馬」「後脚で立ち上がる馬」。

つまり、フェラーリのエンブレムそのものを指している。

フェラーリ自身も英語版の公式資料で「Prancing Horse」をブランドの象徴として使用しており、企業資料ではこのシンボルが独占性、革新性、最先端のスポーツ性能を象徴すると説明している。

そのため海外記事で、

「a victory for the Prancing Horse」

などと書かれていれば、馬が勝ったわけではない。

「フェラーリの勝利」

という意味だ。

日本語でフェラーリを「跳ね馬」と呼ぶ感覚にもかなり近い。

イタリアでは「Cavallino Rampante」

本国イタリアで使われる表現が、

Cavallino Rampante

だ。

「Cavallino」は小さな馬、「Rampante」は後脚で立ち上がった姿を意味する。

日本では一般的に「跳ね馬」と訳される。

実際、フェラーリ公式のイタリア語資料では、フェラーリそのものを示す代名詞のように「Cavallino Rampante」という表現が登場する。F80の公式発表でも、同車を「Cavallino Rampante」の新たなスーパーカーとして紹介している。

ここが面白い。

Ferrariという企業名とは別に、

エンブレムそのものがブランドを意味する言葉になっている。

ポルシェなら「クレスト」、メルセデスなら「スリーポインテッドスター」が有名だが、フェラーリの場合は馬そのものが独立したブランドアイコンになっているのである。

そもそも、あの馬はフェラーリが考えたものではない

では、なぜフェラーリは馬なのか。

実はこのエンブレム、エンツォ・フェラーリがゼロからデザインしたものではない。

原型は第一次世界大戦で活躍したイタリアの英雄的航空兵、

フランチェスコ・バラッカ

が使用していた馬の紋章だった。

バラッカの家族から、そのシンボルを幸運のお守りとして使うよう勧められたことが、フェラーリの跳ね馬につながったと公式資料に残されている。

そして1932年7月9日。

スパ24時間に参戦したスクーデリア・フェラーリのアルファロメオに、跳ね馬のエンブレムが初めて掲げられた。

このとき、まだ「Ferrari製ロードカー」は存在していない。

つまり、

フェラーリという自動車より先に、跳ね馬がレースを走っていたのである。

なぜ背景は黄色なのか?

フェラーリといえば赤。

なのに、エンブレムの背景は黄色だ。

ここにも理由がある。

黄色はエンツォ・フェラーリの故郷、

モデナ

を象徴する色だからだ。

フェラーリ公式によれば、初期の跳ね馬エンブレムにも黄色い背景が使われ、それはモデナへの敬意を表したものだった。

黒い馬。

黄色い背景。

上部にはイタリア国旗のトリコローレ。

そしてレーシング仕様の盾には「S F」。

この二文字は、

Scuderia Ferrari

を意味する。

小さな盾の中に、イタリア、モデナ、航空史、モータースポーツという複数の物語が詰め込まれている。

「Scuderia Ferrari」──直訳すると“フェラーリ厩舎”

F1を見ていれば当たり前のように耳にする、

Scuderia Ferrari。

しかし「Scuderia」という単語を直訳すると、かなり面白い。

本来は、

「厩舎」

を意味するイタリア語だ。

そこから転じて、モータースポーツではレーシングチームという意味で使われる。

つまりScuderia Ferrariを極端に直訳すれば、

「フェラーリ厩舎」

になる。

跳ね馬をエンブレムにするチームが「厩舎」と名乗っている。

出来すぎた話のようだが、この組み合わせが世界で最も有名なレーシングブランドの一つになった。

現在でも正式名称としてScuderia Ferrariが使われており、「Scuderia」だけでフェラーリF1チームを指す文脈も珍しくない。

「Ferrari」と「Scuderia Ferrari」は同じではない

ここは意外と重要だ。

Ferrariは自動車メーカー/ブランド全体。

Scuderia Ferrariはレーシングチームを意味する。

したがって488 GTBやF40、12Cilindriなどのロードカーを「Scuderia」と呼ぶのは基本的には適切ではない。

ただし、フェラーリの歴史ではレーシングチームが自動車メーカーより先に存在した。

Scuderia Ferrariが設立されたのは1929年。

一方、最初のフェラーリ125 Sがマラネロの門を出たのは1947年だ。フェラーリ公式も125 Sを「Ferrari」の名を冠した最初のクルマとしている。

つまり、

市販車メーカーの中にレーシングチームがあるのではない。

歴史的には、

レーシングチームから自動車メーカーが生まれた。

ここがフェラーリという会社の特殊さだ。

フェラーリファンは「Tifosi」

そしてフェラーリには、クルマではなく「人」にも特別な呼び名がある。

Tifosi(ティフォシ)。

イタリア語で熱狂的なスポーツファンを意味する「tifoso」の複数形だ。

本来はフェラーリ専用語ではなく、イタリアではサッカーなどのファンにも使われる。

しかし世界のモータースポーツ、とりわけF1の文脈で「the Tifosi」と書かれれば、

フェラーリを熱狂的に応援するファン

を指すケースが非常に多い。

モンツァのスタンドを真紅に染める人々。

フェラーリが勝てばコースへなだれ込むほど喜び、負ければ本気で落ち込む。

メーカーとファンというより、

宗教と信者に近いほどの熱量。

それがTifosiという言葉に込められている。

「Rosso Corsa」はフェラーリだけの赤ではなかった

フェラーリの呼び名を語るなら、色も外せない。

Rosso Corsa。

日本語なら「レーシング・レッド」といった意味になる。

現在ではフェラーリを象徴する色として世界的に知られている。

しかし、もともとこれはフェラーリ専用色ではない。

モータースポーツ黎明期には国ごとにレーシングカラーが割り当てられ、イタリア車は赤を使用した。

フェラーリ公式資料もRosso Corsaについて、1920年代以来イタリアのレーシングカーを象徴してきた赤と説明している。

アルファロメオも赤。

マセラティも赤。

そしてフェラーリも赤だった。

ところがF1とスポーツカーレースでフェラーリがあまりにも有名になったため、

「イタリアのレーシングカラー」だった赤が、いつしか「フェラーリの色」に見えるようになった。

ブランドというものの恐ろしさである。

実はフェラーリF1が赤くなかった時期もある

「フェラーリ=赤」は絶対のように思える。

ところが、歴史上は例外も存在する。

1964年シーズン終盤、フェラーリのF1マシンはアメリカのNART(North American Racing Team)名義で出走し、アメリカのレーシングカラーである白と青をまとった。

フェラーリ自身も、1964年最後の2戦で象徴的なRosso Corsaに代わり、白と青のカラーリングが使われた歴史を紹介している。

しかもこのシーズン、ジョン・サーティースが世界王者になっている。

つまり、

赤くないフェラーリがF1世界タイトルを決めた。

マニア向けトリビアとしては相当強い。

「Maranello」もフェラーリを示す特別な言葉

海外の自動車記事やモータースポーツ記事では、

Maranello

という地名も頻繁に登場する。

マラネロはフェラーリ本社と工場があるイタリアの街だ。

そのため英語記事などで、

「the Maranello marque」

「the Maranello manufacturer」

などと書かれればフェラーリを意味する。

日本語でも「マラネロの跳ね馬」と表現されることがある。

これは英国メーカーを「マラネロ」と呼ぶことができないのと同じで、土地とメーカーの歴史が完全に結び付いた表現だ。

フェラーリにとってマラネロは単なる本社所在地ではない。

テストコースのフィオラノも近くにあり、ロードカー、F1、レーシング活動が集約された、

跳ね馬の聖地

なのである。

「Il Commendatore」──クルマではなくエンツォの呼び名

さらにフェラーリ史へ踏み込むと、創業者エンツォ・フェラーリにも有名な呼称がある。

Il Commendatore。

日本では「コメンダトーレ」と表記されることが多い。

直訳的には「司令官」というより、イタリアの勲章・称号であるCommendatoreに由来する呼び方だ。

後世にはエンツォその人を象徴する呼称として定着した。

サングラス。

厳しい表情。

レースへの執念。

ドライバーに対する冷徹ともいえる姿勢。

ロードカーを売って得た資金をレースへ投入する。

そんなエンツォの強烈なキャラクターと結び付き、「Il Commendatore」という言葉には単なる経営者以上の響きがある。

フェラーリの歴史を深掘りするなら覚えておきたい呼び名だ。

モデル名にも“暗号”が隠れている

フェラーリの場合、車名そのものも面白い。

たとえば、

250 GTO。

「250」は基本的にV12エンジン1気筒あたりの排気量約250ccに由来する。

GTOは、

Gran Turismo Omologato

つまり「ホモロゲーションを取得したGT」という意味だ。

さらに、

365 GTB/4

なら365は1気筒あたりの排気量、GTBはGran Turismo Berlinetta。

一方、

F40

はフェラーリ創業40周年。

F50

は50周年。

Enzo Ferrari

では、ついに創業者その人の名前を付けた。

そして、

LaFerrari。

イタリア語で「The Ferrari」、つまり、

「これこそフェラーリ」

とでも言うべき名前である。

ここまで来ると車名というより宣言だ。

「Daytona」は正式名称ではなかった

フェラーリの海外での呼び名を語るうえで絶対に外せないモデルがある。

Ferrari Daytona。

あまりにも有名なので正式名称だと思われがちだが、本来のモデル名は、

365 GTB/4

である。

「Daytona」は通称として広まった名前だ。

フェラーリが1967年のデイトナ24時間で1-2-3フィニッシュを達成したことと結び付けられ、後に365 GTB/4をDaytonaと呼ぶ名称が定着していった。

面白いのは、その呼び名が強すぎて、

「365 GTB/4」

より、

「Daytona」

のほうが世界的に知られるようになったことだ。

メーカーが正式に付けた車名より、ファンやメディアが使った呼称のほうが有名になる。

名車には時々、こういう現象が起きる。

「Testarossa」は“赤い頭”

さらに有名なのが、

Testarossa。

日本では固有名詞として「テスタロッサ」と覚えている人が多い。

しかしイタリア語を分解すると、

Testa=頭
Rossa=赤い

つまり、

「赤い頭」

という意味だ。

これは1950年代のレーシングカー250 Testa Rossaなどで、エンジンのカムカバーが赤く塗られていたことに由来する。

その歴史的名称が、1980年代のスーパーカーTestarossaへ復活した。

サイドの巨大なフィンで有名なあのクルマも、名前のルーツをたどればレーシングエンジンへ行き着く。

フェラーリらしい命名である。

海外の呼び名を知るとフェラーリの見え方が変わる

Prancing Horse。

Cavallino Rampante。

Scuderia Ferrari。

Tifosi。

Rosso Corsa。

Maranello。

Il Commendatore。

Daytona。

Testarossa。

これだけ呼び名が存在するメーカーは珍しい。

しかも、単なるニックネームではない。

戦闘機に描かれた馬。

モデナの黄色。

イタリアのレーシングカラー。

1929年から続くレーシングチーム。

熱狂的なファン。

デイトナでの勝利。

赤く塗られたエンジン。

すべての呼び名に、何らかの物語がある。

これこそフェラーリが普通のスポーツカーメーカーと違うところだ。

F40を知らなくても跳ね馬は知っている。

F1を見なくてもFerrari Redというイメージは伝わる。

イタリア語を話せなくても「Tifosi」はモンツァの赤いスタンドを連想させる。

つまりフェラーリは、クルマだけを作ってきたのではない。

70年以上のレースとロードカーによって、

独自の“言語”まで作ってしまったブランドなのである。

FAQ

フェラーリは英語圏で何と呼ばれますか?

ブランド名は基本的にFerrariですが、象徴的な表現として「Prancing Horse」が広く使われます。フェラーリ自身も英語の公式資料でこの表現を使用しています。

Cavallino Rampanteとは何ですか?

フェラーリの跳ね馬エンブレムを意味するイタリア語です。フェラーリそのものを象徴する表現としても使われています。

フェラーリの跳ね馬はどこから来たのですか?

第一次世界大戦のイタリア人航空兵フランチェスコ・バラッカが使用していた馬の紋章がルーツです。バラッカの家族からエンツォ・フェラーリへ使用を勧められたとフェラーリ公式資料に記されています。

Tifosiはフェラーリファンだけを意味しますか?

本来はイタリア語でスポーツファン全般を指す言葉です。ただし国際的なF1の文脈で「the Tifosi」と言う場合、フェラーリファンを意味することが非常に多くなっています。

フェラーリの赤はRosso Corsaですか?

Rosso Corsaはフェラーリを象徴する赤として有名ですが、もともとはフェラーリだけの色ではなく、イタリアのレーシングカラーです。フェラーリ公式も1920年代からイタリアのレーシングカーと結び付いた色だと説明しています。

Ferrari Daytonaは正式名称ですか?

クラシックモデルの「Daytona」は一般に365 GTB/4を指す有名な通称です。正式なモデル名は365 GTB/4です。

 


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