トリビア

F1最多タイトル、そしてル・マン3連覇──フェラーリが「レースをやめられない」本当の理由

フェラーリにとって、レースは宣伝活動ではない。むしろ順序が逆だ。レースをするためにフェラーリという自動車メーカーが存在している。創業者エンツォ・フェラーリは、もともとレーシングドライバーであり、スクーデリア・フェラーリもロードカー会社より先に誕生している。そしてF1では世界選手権開始初期から参戦を続け、2026年現在も唯一、1950年からすべてのシーズンに参加しているチームだ。コンストラクターズタイトル16回、ドライバーズタイトル15回はいずれも歴史的な最多記録である。耐久レースでも、長い空白を経てトップカテゴリーへ帰還した499Pがル・マン24時間を2023、2024、2025年と3連覇。さらに2025年にはFIA世界耐久選手権(WEC)のマニュファクチャラーズ世界タイトルまで獲得した。赤いボディが特別なのではない。勝利によって、赤という色そのものを特別にしてしまった。それがフェラーリである。最初のF1勝利──倒した相手はアルファロメオだったフェラーリがF1世界選手権で初勝利を挙げた舞台はシルバーストン。ホセ・フロイラン・ゴンザレスがFerrari375を駆り、強大なアルファロメオ勢...

「エンジンこそクルマの心臓」──フェラーリを世界最高峰へ押し上げた開発秘話

美しいボディを作るだけなら、フェラーリはここまで特別な存在にはならなかった。速いクルマを作るだけでも同じだ。マラネロという小さな街から生まれたメーカーが世界中のクルマ好きを魅了してきた理由は、もっと根深いところにある。創業者エンツォ・フェラーリが何より重視したのは、エンジンだった。最初のフェラーリからV12。レースで勝つために市販車を作り、市販車で得た資金を再びレースへ投入する。250GTO、F40、Enzo、LaFerrari──時代を代表するモデルを追っていくと、フェラーリの開発思想には一本の太い線が見えてくる。「まず速くなければならない。そして、速さそのものが美しくなければならない」そんな狂気にも似た哲学だ。最初のフェラーリは、いきなりV12だったフェラーリ最初の一台は125S。エンツォ・フェラーリは1945年半ば、ジョアッキーノ・コロンボに新型車の設計を依頼した。目標の一つは、エンツォ自身がかつて深く関わったアルファロメオを打ち破ることだった。そしてエンジン形式として選ばれたのが、V型12気筒。しかも排気量はわずか1,496.77ccだった。「125」という車名は1気筒あたりの...

アウディは海外でどう評価されている?──quattroとRSが築いた「知的な速さ」という独自の世界

速さを派手に見せつけるのではなく、雨が降ろうが雪が積もろうが、何事もなかったかのように猛烈なペースで走り去る。そんな“涼しい顔をした速さ”こそ、海外で語られるアウディの魅力だ。BMWには後輪駆動を軸にしたドライバーズカーの伝統があり、メルセデス・ベンツには高級車としての重厚なイメージがある。ではアウディは何なのか。その答えとして浮かび上がるのが、quattro、技術、インテリア、そして全天候型の高速性能。海外メディアの評価を追っていくと、アウディは「最も刺激的なクルマ」として常に評価されているわけではない。むしろ面白いのは、“恐ろしく有能であること”そのものが個性になっていることだ。アウディの評価を変えた「quattro」現在のアウディを理解するうえで、永久四輪駆動システム「quattro」を外すことはできない。初代Audiquattroが登場した当時、高性能車と4WDの組み合わせは現在ほど一般的ではなかった。ところがアウディは、その有効性を世界ラリー選手権で実証する。1982年にマニュファクチャラーズタイトル、1983年にはハンヌ・ミッコラがドライバーズタイトルを獲得。1984年には...

アウディは海外で何と呼ばれる?──「Four Rings」に込められた4社の歴史と、マニアが使う“Ur-quattro”

「BMW=Bimmer」のように、アウディにも世界共通の有名な愛称があるのだろうか。答えは少し複雑だ。英語圏でもブランド名そのものは基本的に「Audi」と呼ばれており、BMWのBimmerほど広く定着したブランド全体のニックネームがあるわけではない。しかし、海外のアウディ関連記事を読み込んでいくと、実に面白い表現が登場する。FourRings。Ur-quattro。SilverArrows。そして歴史をさらに遡れば、AutoUnion。これらは単なる愛称ではない。アウディというメーカーがどこから来て、どんな技術で世界へ名前を刻んだのか。その歴史そのものが凝縮された呼び名なのである。「FourRings」──海外でアウディを象徴する言葉海外のアウディ公式記事で頻繁に登場する表現が、FourRingsだ。直訳すれば「4つの輪」。つまり、あのアウディのエンブレムを指している。アウディ公式資料でも、ブランドや企業そのものを象徴する表現として「theFourRings」が繰り返し使われている。この4つのリングは単なるデザインではない。1932年、ドイツ・ザクセン地方を拠点としていた4社が統合して...

quattroでラリーを変え、ディーゼルでル・マンを制した──アウディが世界のレースに刻んだ「技術で勝つ」という哲学

アウディのモータースポーツ史には、独特の匂いがある。ただ馬力を上げて勝つのではない。「そんな技術でレースをするのか?」と思わせてから、本当に勝ってしまう。永久四輪駆動のquattro。ガソリン直噴のTFSI。ディーゼルのTDI。ハイブリッドのe-tronquattro。そして電動駆動を組み合わせたRSQe-tron。アウディ公式記録では、世界ラリー選手権で4つの世界タイトル、ル・マン24時間で13回の総合優勝、DTMで12回のドライバーズタイトル、ニュルブルクリンク24時間で7回の総合優勝などを記録している。レースを広告として使うメーカーは多い。アウディは少し違う。レースそのものを巨大な実験室にしてきたメーカーなのである。quattroがWRCの常識を破壊したアウディの現代モータースポーツ史を語るなら、すべてはquattroから始まる。高性能車に四輪駆動を組み合わせたAudiquattroは、1981年から世界ラリー選手権へ本格参戦。当時、4WDは「重い」「複雑」「ラリーには不向き」と考えられる面もあった。しかし雪、グラベル、泥といった低μ路では、その常識が一変する。4本のタイヤで駆動...

軍用4WDの雪上テストがすべてを変えた──アウディ「quattro」誕生に隠された開発秘話

高性能車に4WD。いまでは珍しくもない組み合わせだが、それをスポーツカーの世界へ本格的に持ち込み、自らのブランドイメージまで変えてしまったメーカーがある。アウディだ。現在のアウディを象徴する「quattro」は、最初から壮大なブランド戦略として計画された技術ではなかった。きっかけは、北欧の雪道を走っていた一台の無骨なオフロード車。しかもアウディの高性能車ではない。フォルクスワーゲンIltis(イルティス)だった。「なぜ、非力なオフロード車が雪の上ではこんなに速いんだ?」技術者が抱いた素朴な疑問が、やがて世界のラリーを変え、アウディそのものをプレミアムブランドへ押し上げることになる。これは単なる4WD開発の物語ではない。アウディが「技術によって常識をひっくり返すメーカー」になっていく物語である。雪のフィンランドで見つかった「異常に速いクルマ」quattroの原点は、1976~77年冬に行われた寒冷地テストにある。アウディがフォルクスワーゲン向けに開発していたIltisという四輪駆動オフロード車が、雪と氷に覆われた路面で驚異的な走破性能を見せた。絶対的なパワーではスポーティな乗用車に及ばな...

BMWは海外でどう評価されている?──「走りの基準」を作り続けるドイツの異端児

高級車なら、快適で静かなだけでも成立する。スポーツカーなら、速さだけを追求することもできる。ところがBMWは、そのどちらか一方を選ばなかった。「家族を乗せて長距離を走れる。でも、ワインディングに入ればドライバーを熱くさせる」この一見矛盾したキャラクターこそ、世界でBMWが評価されてきた最大の理由だ。とりわけ3シリーズや歴代Mモデルは、海外メディアがスポーツセダンを評価するときの比較対象になってきた。BMW自身が掲げる言葉は「SheerDrivingPleasure(駆けぬける歓び)」。だがこれは単なる広告コピーではない。軽量ボディ、後輪駆動、ドライバー中心のコクピット、レスポンスの良いエンジン──BMWによれば、その思想を強烈に具現化したのが1960年代の02シリーズだった。世界がBMWに期待するものは、昔から意外なほど変わっていない。「運転して面白いか?」結局は、そこなのである。3シリーズはなぜ世界で特別なのかBMWの海外評価を語るなら、まず3シリーズを外すことはできない。初代E21が登場してから、3シリーズはコンパクトなボディ、ドライバーを向いたコクピット、後輪駆動というBMWの基...

BMWは海外で何と呼ばれる?──「Bimmer」「Beemer」に隠された意外に深いBMW文化

「BMWって、海外では何と呼ばれているの?」クルマ好きなら一度は気になったことがあるかもしれない。日本ではそのまま「ビー・エム・ダブリュー」と呼ぶのが一般的だが、英語圏のBMWファン、とりわけ北米では少し事情が違う。そこには、Bimmer(ビマー)Beemer(ビーマー)Beamer(ビーマー)という、いかにも愛好家文化らしい呼び名が存在する。しかも単なる発音違いではない。BMW自身が2026年に公開した解説によれば、ファン文化の中では「クルマ」と「バイク」で呼び分けられてきた歴史がある。知ってしまうと、海外のBMW記事や動画を見るのが少し面白くなる。BMWのクルマなら「Bimmer」英語圏、特にアメリカのBMW愛好家の間で自動車を指す代表的な愛称が、Bimmerだ。発音を日本語で表現するなら「ビマー」に近い。BMWCarClubofAmerica(BMWCCA)の公式サイトでも、“yourfirstBimmer,oryourthirtieth”という具合に、BMW車を意味する言葉として普通に「Bimmer」が使われている。BMWCCAは1969年設立の歴史あるオーナークラブで、この呼...

勝つために生まれ、ロードカーへ還元する──BMWが世界のサーキットに刻んだレース実績

BMWというブランドを「高級スポーツセダンのメーカー」だけで語ると、その本質を半分ほど見落としてしまう。BMWの歴史には、常にモータースポーツがあった。ツーリングカー、F1、ル・マン、デイトナ、セブリング、ニュルブルクリンク24時間──舞台が変わってもBMWは戦い続け、その経験を市販車へ持ち帰ってきた。とりわけBMWMの「M」が意味するのは、MarketingでもLuxuryでもない。Motorsport。つまりM3やM4の奥には、本物のレーシングカーで積み重ねた膨大なデータと勝負の記憶が流れている。BMWのレース史をたどれば、なぜ同社がこれほど「曲がること」に執着するのか、その理由が見えてくる。BMWMotorsportの原点、3.0CSLBMWMのレース史を語るなら、まず3.0CSLを外すことはできない。BMWMotorsportGmbHが設立された翌シーズン、3.0CSLは早くも欧州ツーリングカー選手権を制覇。その後も欧州ツーリングカー選手権でタイトルを重ねた。BMWM公式資料によれば、1973年のタイトルに続き、1975~1979年にも同選手権を制している。さらに舞台はヨーロッ...