2026-09

quattroでラリーを変え、ディーゼルでル・マンを制した──アウディが世界のレースに刻んだ「技術で勝つ」という哲学

アウディのモータースポーツ史には、独特の匂いがある。ただ馬力を上げて勝つのではない。「そんな技術でレースをするのか?」と思わせてから、本当に勝ってしまう。永久四輪駆動のquattro。ガソリン直噴のTFSI。ディーゼルのTDI。ハイブリッドのe-tronquattro。そして電動駆動を組み合わせたRSQe-tron。アウディ公式記録では、世界ラリー選手権で4つの世界タイトル、ル・マン24時間で13回の総合優勝、DTMで12回のドライバーズタイトル、ニュルブルクリンク24時間で7回の総合優勝などを記録している。レースを広告として使うメーカーは多い。アウディは少し違う。レースそのものを巨大な実験室にしてきたメーカーなのである。quattroがWRCの常識を破壊したアウディの現代モータースポーツ史を語るなら、すべてはquattroから始まる。高性能車に四輪駆動を組み合わせたAudiquattroは、1981年から世界ラリー選手権へ本格参戦。当時、4WDは「重い」「複雑」「ラリーには不向き」と考えられる面もあった。しかし雪、グラベル、泥といった低μ路では、その常識が一変する。4本のタイヤで駆動...

軍用4WDの雪上テストがすべてを変えた──アウディ「quattro」誕生に隠された開発秘話

高性能車に4WD。いまでは珍しくもない組み合わせだが、それをスポーツカーの世界へ本格的に持ち込み、自らのブランドイメージまで変えてしまったメーカーがある。アウディだ。現在のアウディを象徴する「quattro」は、最初から壮大なブランド戦略として計画された技術ではなかった。きっかけは、北欧の雪道を走っていた一台の無骨なオフロード車。しかもアウディの高性能車ではない。フォルクスワーゲンIltis(イルティス)だった。「なぜ、非力なオフロード車が雪の上ではこんなに速いんだ?」技術者が抱いた素朴な疑問が、やがて世界のラリーを変え、アウディそのものをプレミアムブランドへ押し上げることになる。これは単なる4WD開発の物語ではない。アウディが「技術によって常識をひっくり返すメーカー」になっていく物語である。雪のフィンランドで見つかった「異常に速いクルマ」quattroの原点は、1976~77年冬に行われた寒冷地テストにある。アウディがフォルクスワーゲン向けに開発していたIltisという四輪駆動オフロード車が、雪と氷に覆われた路面で驚異的な走破性能を見せた。絶対的なパワーではスポーティな乗用車に及ばな...

BMWは海外でどう評価されている?──「走りの基準」を作り続けるドイツの異端児

高級車なら、快適で静かなだけでも成立する。スポーツカーなら、速さだけを追求することもできる。ところがBMWは、そのどちらか一方を選ばなかった。「家族を乗せて長距離を走れる。でも、ワインディングに入ればドライバーを熱くさせる」この一見矛盾したキャラクターこそ、世界でBMWが評価されてきた最大の理由だ。とりわけ3シリーズや歴代Mモデルは、海外メディアがスポーツセダンを評価するときの比較対象になってきた。BMW自身が掲げる言葉は「SheerDrivingPleasure(駆けぬける歓び)」。だがこれは単なる広告コピーではない。軽量ボディ、後輪駆動、ドライバー中心のコクピット、レスポンスの良いエンジン──BMWによれば、その思想を強烈に具現化したのが1960年代の02シリーズだった。世界がBMWに期待するものは、昔から意外なほど変わっていない。「運転して面白いか?」結局は、そこなのである。3シリーズはなぜ世界で特別なのかBMWの海外評価を語るなら、まず3シリーズを外すことはできない。初代E21が登場してから、3シリーズはコンパクトなボディ、ドライバーを向いたコクピット、後輪駆動というBMWの基...

BMWは海外で何と呼ばれる?──「Bimmer」「Beemer」に隠された意外に深いBMW文化

「BMWって、海外では何と呼ばれているの?」クルマ好きなら一度は気になったことがあるかもしれない。日本ではそのまま「ビー・エム・ダブリュー」と呼ぶのが一般的だが、英語圏のBMWファン、とりわけ北米では少し事情が違う。そこには、Bimmer(ビマー)Beemer(ビーマー)Beamer(ビーマー)という、いかにも愛好家文化らしい呼び名が存在する。しかも単なる発音違いではない。BMW自身が2026年に公開した解説によれば、ファン文化の中では「クルマ」と「バイク」で呼び分けられてきた歴史がある。知ってしまうと、海外のBMW記事や動画を見るのが少し面白くなる。BMWのクルマなら「Bimmer」英語圏、特にアメリカのBMW愛好家の間で自動車を指す代表的な愛称が、Bimmerだ。発音を日本語で表現するなら「ビマー」に近い。BMWCarClubofAmerica(BMWCCA)の公式サイトでも、“yourfirstBimmer,oryourthirtieth”という具合に、BMW車を意味する言葉として普通に「Bimmer」が使われている。BMWCCAは1969年設立の歴史あるオーナークラブで、この呼...

勝つために生まれ、ロードカーへ還元する──BMWが世界のサーキットに刻んだレース実績

BMWというブランドを「高級スポーツセダンのメーカー」だけで語ると、その本質を半分ほど見落としてしまう。BMWの歴史には、常にモータースポーツがあった。ツーリングカー、F1、ル・マン、デイトナ、セブリング、ニュルブルクリンク24時間──舞台が変わってもBMWは戦い続け、その経験を市販車へ持ち帰ってきた。とりわけBMWMの「M」が意味するのは、MarketingでもLuxuryでもない。Motorsport。つまりM3やM4の奥には、本物のレーシングカーで積み重ねた膨大なデータと勝負の記憶が流れている。BMWのレース史をたどれば、なぜ同社がこれほど「曲がること」に執着するのか、その理由が見えてくる。BMWMotorsportの原点、3.0CSLBMWMのレース史を語るなら、まず3.0CSLを外すことはできない。BMWMotorsportGmbHが設立された翌シーズン、3.0CSLは早くも欧州ツーリングカー選手権を制覇。その後も欧州ツーリングカー選手権でタイトルを重ねた。BMWM公式資料によれば、1973年のタイトルに続き、1975~1979年にも同選手権を制している。さらに舞台はヨーロッ...

倒産危機から「駆けぬける歓び」へ──BMWをBMWにした開発秘話

「BMWらしいクルマ」と聞けば、何を思い浮かべるだろう。直列6気筒。後輪駆動。50:50にこだわる重量配分。ドライバー側へ向けられたコクピット。そして、アクセルを踏み込んだ瞬間に感じる独特の一体感。だが、このキャラクターは最初から完成していたわけではない。むしろBMWは、企業存続さえ危ぶまれた時代に「自分たちはどんなクルマを作るメーカーなのか」という問いと向き合い、その答えを一台ずつ積み重ねてきた。BMWの開発史とは、スペック競争の歴史ではない。ドライバーをクルマの中心に置くという思想を、何十年にもわたって磨き続けてきた物語なのである。BMWを救った「NeueKlasse」現在のBMWにつながる決定的な転換点が「NeueKlasse(ノイエ・クラッセ/ニュー・クラス)」だった。1950年代末のBMWは経営的に厳しい状況にあり、1959年には会社の将来を左右する局面を迎えていた。大株主となるヘルベルト・クヴァントの関与によって独立存続への道が開かれ、その後BMWは新しい中型車の開発へ力を注いでいく。そこで生まれたのがBMW1500を起点とするNeueKlasseだ。BMWGroupCla...

世界はメルセデス・ベンツをどう評価しているのか──140年以上愛され続ける理由と揺るがないブランド価値

高級車ブランドは数多く存在する。しかし、その中でも「基準」として語られることが多いのがメルセデス・ベンツだ。世界初の実用自動車を生み出した歴史、安全技術をリードしてきた開発力、そしてラグジュアリーカーとしての高い完成度。メルセデス・ベンツは、単なるプレミアムブランドではなく、自動車そのものの進化を支えてきたメーカーとして世界中から評価されている。一方で、近年は電動化やデジタル化への転換、高度な電子制御システムの採用など、新しい課題にも直面している。それでもブランドとしての存在感が揺らがない理由は、長年培ってきた技術力と信頼にある。今回は、海外で語られるメルセデス・ベンツの評価を詳しく紹介しよう。ヨーロッパでは「高級車の基準」本拠地であるドイツをはじめ、ヨーロッパではメルセデス・ベンツは「プレミアムカーの基準」として位置付けられている。特にSクラスは、新型モデルが登場するたびにライバルメーカーの比較対象となり、安全性能や快適性、最新技術のベンチマークとして扱われる。アウトバーンで鍛えられた高速安定性や静粛性は高く評価され、「長距離移動で最も快適なクルマの一つ」という評価も珍しくない。また...

世界ではメルセデス・ベンツをどう呼ぶ?──ブランド名に込められた意味と海外で親しまれる呼び名

世界中で高級車ブランドとして高い知名度を誇るメルセデス・ベンツ。しかし、日本で一般的に使われる「ベンツ」という呼び方は、海外では少し事情が異なる。欧米では正式名称で呼ばれることが多く、愛称や略称も国や地域によってさまざまだ。また、「AMG」「S-Class」「G-Class」といったモデル名やサブブランドの知名度も非常に高く、ブランドそのものを象徴する呼び名として定着している。今回は、メルセデス・ベンツが海外でどのように呼ばれ、どのようなブランドイメージを持たれているのかを紹介しよう。正式名称は「Mercedes-Benz」世界共通の正式名称はMercedes-Benzである。自動車専門誌やメーカー公式サイト、モータースポーツの場面でも、この正式名称が使われる。「Mercedes」はブランド名、「Benz」は自動車の発明者として知られるカール・ベンツの姓に由来しており、現在の社名は両者の歴史を受け継いだものとなっている。海外では正式名称で呼ばれることが非常に多く、「Mercedes-Benz」は高級車の代名詞として広く認知されている。「Mercedes」が最も一般的な呼び方英語圏やヨー...

世界最速を目指し続けた星の軌跡──メルセデス・ベンツが築いた輝かしいレース実績

モータースポーツの歴史を振り返ると、常にトップカテゴリーで戦い続けてきたブランドがある。それがメルセデス・ベンツだ。世界初の実用自動車を生み出したメーカーは、公道だけでなくサーキットでも技術革新を追求し、100年以上にわたり数々の伝説を築いてきた。グランプリレース、耐久レース、DTM、そして現代のF1。メルセデス・ベンツは、勝利を目指すだけではなく、レースで得た技術を市販車へ還元するという哲学を貫いてきた。今回は、メルセデス・ベンツがモータースポーツの世界で刻んできた輝かしい戦績と、その技術的な功績を紹介しよう。グランプリ黎明期から世界をリードメルセデス・ベンツのレース活動は、自動車競技の黎明期から始まっている。ヨーロッパ各地で開催された初期のグランプリレースでは、高出力エンジンと高い信頼性を武器に数多くの勝利を獲得した。「速く、壊れないクルマ」を目指した開発姿勢は、市販車づくりにも大きな影響を与え、ブランド全体の技術力向上へとつながっていった。「シルバーアロー」が伝説となった理由メルセデス・ベンツを象徴する存在が「シルバーアロー(SilverArrows)」である。1930年代、車両...