高級車なら、快適で静かなだけでも成立する。
スポーツカーなら、速さだけを追求することもできる。
ところがBMWは、そのどちらか一方を選ばなかった。
「家族を乗せて長距離を走れる。でも、ワインディングに入ればドライバーを熱くさせる」
この一見矛盾したキャラクターこそ、世界でBMWが評価されてきた最大の理由だ。
とりわけ3シリーズや歴代Mモデルは、海外メディアがスポーツセダンを評価するときの比較対象になってきた。
BMW自身が掲げる言葉は「Sheer Driving Pleasure(駆けぬける歓び)」。
だがこれは単なる広告コピーではない。
軽量ボディ、後輪駆動、ドライバー中心のコクピット、レスポンスの良いエンジン──BMWによれば、その思想を強烈に具現化したのが1960年代の02シリーズだった。
世界がBMWに期待するものは、昔から意外なほど変わっていない。
「運転して面白いか?」
結局は、そこなのである。
3シリーズはなぜ世界で特別なのか
BMWの海外評価を語るなら、まず3シリーズを外すことはできない。
初代E21が登場してから、3シリーズはコンパクトなボディ、ドライバーを向いたコクピット、後輪駆動というBMWの基本思想を体現してきた。
BMWによれば、3シリーズは歴代累計で2,000万台以上が販売されている。
しかしクルマ好きにとって重要なのは販売台数ではない。
3シリーズが長年、
「スポーツセダンとはどうあるべきか」
という問いへのBMWなりの回答であり続けたことだ。
セダンなのにステアリングが楽しい。
後席もトランクもあるのに、コーナーへ入るとFRスポーツの顔を見せる。
この二面性がBMWを世界的なブランドへ押し上げた。
海外でライバルメーカーのスポーツセダンが登場するとBMW 3シリーズが比較対象になりやすいのも、それだけ長期間このカテゴリーを代表してきたからだ。
「直6」はBMWファンにとって特別な言葉
BMWを知る海外ファンに「好きなBMWエンジンは?」と聞けば、かなりの確率で話題になるのが直列6気筒だ。
シルキーな回転フィール。
滑らかな吹け上がり。
独特の排気音。
そして高回転まで回したときの機械的な気持ちよさ。
歴代M3、M5、M1、635CSi、Z4など、BMW史には名機と呼ばれる直列6気筒が数多く登場してきた。
BMWにとって直6は単なるエンジン形式ではない。
ブランドの人格の一部なのである。
現在ではターボ化や電動化が進んでいるものの、「BMWといえばStraight-Six」というイメージは海外のエンスージアストにも根強い。
BMW Mは「高級車の速い版」ではない
海外のクルマ好きがBMWを見るとき、通常モデルとMモデルでは少し意味合いが違う。
BMW Mの原点はモータースポーツだ。
3.0 CSL、M1、E30 M3など、初期のMを象徴するモデルにはレースとの極めて濃密な関係があった。
特にE30 M3は「市販3シリーズを豪華で速くしたクルマ」というより、ツーリングカーレースで戦うために生まれたホモロゲーションモデルだった。
そのため海外では、M3という名前そのものに特別な敬意を持つファンが多い。
エンジン出力だけではない。
ステアリング。
デフ。
サスペンション。
ブレーキ。
ボディ剛性。
そしてアクセルで車体姿勢を作るFRらしい感覚。
BMW Mの評価軸は、伝統的に「何馬力あるか」よりも、
「ドライバーがどれだけクルマを操れるか」
に置かれてきた。
これがMを単なる高出力グレードとは違う存在にしている。
アメリカでは「Ultimate Driving Machine」
北米でBMWを象徴してきた有名なフレーズが、
The Ultimate Driving Machine
だ。
「究極のドライビングマシン」とでも訳せるこの表現は、BMWの米国でのブランドイメージと強く結び付いてきた。
つまりBMWはアメリカでも、単なるドイツ製高級車ではなく「運転するためのプレミアムカー」としてブランドを築いてきたのである。
高速道路をゆったり流すラグジュアリーカーとは少し違う。
ハンドルを握るオーナー自身が楽しむ。
このキャラクターがBMWの特徴だ。
だから海外のBMWファンは、愛車を単なるステータスシンボルとしてではなく、「ドライバーズカー」として語ることが多い。
ヨーロッパでは「高速巡航」と「曲がる楽しさ」を両立
BMWの本国ドイツにはアウトバーンがある。
速度無制限区間も存在する環境では、200km/h近い速度域でも安定して走れるシャシー性能、高速ブレーキング、冷却性能、直進安定性などが求められる。
同時にBMWは、ワインディングでの俊敏さも捨ててこなかった。
高速道路では落ち着いている。
コーナーへ入れば軽快。
この二面性は、BMWが長年得意としてきた部分だ。
3シリーズについてBMW自身も、俊敏なハンドリングやダイナミクスと日常性を組み合わせてきたモデルと位置付けている。
高速巡航性能だけでもない。
サーキット性能だけでもない。
「どこを走ってもBMWらしい」ことが評価されてきたのである。
ただし、海外評価は絶賛一色ではない
BMWは評価の高いブランドだが、もちろん批判もある。
特に近年のモデルでは、ボディサイズや重量の増加、操作系のデジタル化、巨大化したキドニーグリルをはじめとするデザインについて、海外でも意見が分かれてきた。
古くからのファンには、
「昔のBMWの方が軽くてシンプルだった」
と考える層もいる。
E30、E36、E46などの旧世代3シリーズが海外で現在も熱狂的に支持される理由の一つだ。
電子制御が少なく、比較的コンパクトで、ステアリングやペダルから伝わってくる情報が濃い。
つまりBMWには少し皮肉な現象がある。
新しいBMWの最大のライバルが、昔のBMWになってしまうことがあるのだ。
それだけ過去のモデルが強烈だった、とも言える。
それでもBMWは「走り」を捨てていない
電気自動車の時代になると、BMWらしさは消えてしまうのではないか。
そんな疑問を持つファンもいる。
BMWの回答が、新世代のNeue Klasseだ。
2025年に新型iX3から量産展開が始まったNeue Klasseでは、電動化やデジタル化だけではなく、BMW特有のドライビング体験そのものを再構築している。
その象徴が、
Heart of Joy
と呼ばれる中央制御ユニットだ。
駆動系と車両運動制御を一つの高性能コンピューターへ統合し、BMW独自のDynamic Performance Controlソフトウェアと組み合わせる。従来システムより最大10倍高速に情報処理できるとBMWは説明している。
つまりEVになってもBMWが最優先しているのは、
「航続距離だけ」でも、
「巨大ディスプレイだけ」でもない。
電気自動車でもBMWらしく曲がれるか。
ここへ本気で開発リソースを投入している。
1960年代と現代の「Neue Klasse」がつながる理由
面白いのは、BMWが新世代EVのプロジェクトに「Neue Klasse」という歴史的名称を再び使ったことだ。
初代Neue Klasseは1960年代、BMWというブランドの方向性を決定付けた。
BMW 1500を起点に、スポーティな中型セダンという市場を開拓し、後の3シリーズや5シリーズにつながる基盤を作った。
BMW自身も、この時代のNeue Klasseが現在のBMWブランドの基礎を築いたと説明している。
そして現在のNeue Klasseもまた、電動化、デジタル化、デザイン、車両制御を根本から作り直すプロジェクトとして位置付けられている。
名前を再利用したのは偶然ではない。
BMWにとってNeue Klasseとは、
「会社そのものを作り直すほどの転換点」
を意味しているのである。
海外でBMWが愛される本当の理由
BMWにはもっと豪華なライバルがいる。
もっと派手なスーパーカーもある。
もっと大排気量のエンジンを積んだクルマも存在する。
それでもBMWには、他ブランドでは代替しにくい魅力がある。
それは、
「自分で運転したくなる高級車」
という立ち位置だ。
会社へ乗っていける。
家族旅行にも使える。
アウトバーンを高速巡航できる。
そして休日にはワインディングへ行きたくなる。
その絶妙なバランスを、BMWは何十年も磨いてきた。
02シリーズから3シリーズへ。
3.0 CSLからM3へ。
自然吸気からターボへ。
そして内燃機関から電動化へ。
技術は変わっても、BMW自身が守ろうとしている言葉は変わらない。
Sheer Driving Pleasure。
世界でBMWが評価され続ける理由は、スペック表を見ただけでは分からない。
最後はやはり、ステアリングを握ったときに答えが出るブランドなのである。
FAQ
BMWは海外でどのように評価されていますか?
高級感だけでなく、ハンドリングやドライバーとの一体感を重視するプレミアムブランドとして知られています。特に3シリーズやBMW Mは、BMWのスポーティなブランドイメージを象徴する存在です。
BMW 3シリーズはなぜ重要なのですか?
BMWの「スポーツ性能と日常性を両立する」という思想を代表するモデルだからです。BMWによれば、3シリーズは歴代で2,000万台以上が販売されています。
海外では古いBMWも人気がありますか?
はい。E30やE36、E46などは、比較的軽量な車体やアナログ感の強いドライビングフィールを好むエンスージアストから現在も支持されています。
BMWはEVになっても走りを重視していますか?
BMWはNeue Klasseでドライビングダイナミクスを重要テーマに据えています。新しい「Heart of Joy」は駆動系と車両運動制御を統合し、BMWらしい走行感覚を電動車でも実現することを狙った技術です。
「Sheer Driving Pleasure」とは何ですか?
BMWを象徴するブランドプロミスです。BMWによれば、その思想は1960年代のNeue Klasse時代にさかのぼり、軽量・後輪駆動・ドライバー中心設計の02シリーズによって強く具現化されました。
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