三つ星はこうして鍛えられた――メルセデス・ベンツ開発秘話大全

GTNET

はじめに

メルセデス・ベンツ。この名前を耳にすれば、多くのクルマ好きは「安全」「高級」「革新」というキーワードを思い浮かべるでしょう。しかし、その背後には単なるブランドイメージでは語り尽くせない、数十年にわたる技術者たちの執念と、数えきれないほどの試行錯誤、そして時に奇想天外な実験が隠されています。
今回は海外Wikipediaなど信頼性の高い情報をもとに、30〜50代のクルマ好きに向けて、メルセデス・ベンツの開発現場で語り継がれる秘話やトリビアを、読みやすくかつマニアックに掘り下げます。

1. 「世界初」の看板は伊達じゃない

  • ABS(アンチロック・ブレーキシステム)を量産車に初搭載したのは1978年のSクラス。

  • 実は開発段階で航空機メーカーとの共同研究がベースになっていた。試験車には航空機用センサーを流用し、テストパイロットが同乗した記録も。

2. ベンツの衝突試験は本物の“ガチ”

  • 1950年代から自社施設でクラッシュテストを実施。

  • 当時は人形ではなく実際の運転者(志願社員)が低速衝突試験に参加したという逸話が残る。

3. 「安全ボディ」特許戦争

  • ベンツは特許「クラッシャブルゾーン(衝撃吸収構造)」を1951年に取得。

  • 驚くべきは、この特許を無償開放し他メーカーに使わせたこと。理由は「命を救う技術は囲い込まない」という企業哲学。

4. 雪原でのABS耐久試験

  • 北欧ラップランドでのテストでは、-30℃の環境で数百回のフルブレーキを繰り返す。

  • テストドライバーの靴底が凍り付いてペダルに張り付くハプニングも。

5. AMG誕生の裏話

  • 元メルセデスのエンジニア2人が1967年、自宅のガレージで始めたチューニング工房がAMG。

  • 「市販車でレースに勝つ」という理念は、のちにCクラスDTMやF1ハイブリッドPU開発にもつながる。

6. 世界で最も過酷な気候テストルート

  • メルセデスのテストカーはスウェーデンの氷雪路からアリゾナ砂漠まで走破。

  • さらに高度3,000mを超えるアンデス山脈での走行試験も行う。

7. エンジン耐久試験の“怪物”ベンチ

  • 新型エンジンは実車搭載前に数百時間、フル負荷で回し続ける試験が行われる。

  • 一部のAMG V8は、ニュルブルクリンク24時間レースの総走行距離相当をベンチで再現。

8. 190E 2.3-16のニュルでの意地

  • 1984年、F1レジェンドたちが190E 2.3-16でニュル北コースを走るプロモイベントを開催。

  • 優勝はアイルトン・セナ。当時無名の新人がベンツを操り大物を打ち負かした瞬間だった。

9. W124タクシー伝説

  • ドイツのタクシー業界ではW124が100万km以上ノントラブルで走る例が続出。

  • これは社内でも誇らしい逸話として語られ、「タクシーテスト」と呼ばれる耐久評価に発展。

10. ウィンカーの“カチカチ音”に込められたこだわり

  • ドライバーが直感的に確認できるよう、周波数と音圧を人間工学的に最適化。

  • 実験では複数の“カチカチ音”を被験者に聞かせて好感度調査を実施。

11. F1との技術還元

  • 現代F1でのハイブリッドPU技術は、AMG Oneのパワートレインとして市販車に搭載。

  • 市販車で1.6L V6ターボ+電動モーターというF1直系ユニットを積むのは前代未聞。

12. 「ドアの閉まる音」はブランド資産

  • 重厚かつ密閉感のある“ベンツのドア音”は開発段階で録音・分析。

  • NVH(騒音・振動・ハーシュネス)部門には専用の音響実験室が存在する。

13. 自動運転の先駆け

  • 1990年代にすでに高速道路での自動追従走行実験を成功させていた。

  • 試験車両はSクラスで、当時の外部センサーはトランクに収まらないほど巨大だった。

14. ガルウィングの復活劇

  • 1954年の300SLで採用されたガルウィングドア。

  • SLS AMGで復活するにあたり、現代の衝突安全基準に適合させるため油圧展開装置を新規開発。

15. 「塗装は5層」という贅沢

  • 高級モデルの塗装工程は5層構造で、層ごとに研磨・焼き付けを実施。

  • この工程は雨粒が転がる水弾き性能や耐腐食性を向上させる。

16. 実はカスタマー向けの極秘オプション

  • 社外非公開で特注インテリアや特別色を提供するプログラム「designo」では、王室やセレブ専用仕様も存在。

17. 風洞実験のスケール感

  • 自社風洞は新幹線車両や飛行機の試験にも使用可能な巨大施設。

  • Cd値改善のため、ドアミラー形状だけで100案以上試作した事例も。

18. メルセデスの極秘サウンドライブラリ