“人々の車”の名を背負いながら、世界で愛され、呼び名を得たブランド
序章:Volkswagenという名が旅した地平
「Volkswagen(フォルクスワーゲン)」──ドイツ語で“人民(Volks)の車(Wagen)”を意味するこの名は、1930年代から「多くの人に車を」という夢を体現してきた。
しかしその“人々の車”という枠が、サーキット、ラリー、ヒルクライムの最前線で戦う姿を見せた時、世界から新たな称号が生まれた。
車好きの胸をざわつかせるのは、そのギャップだ。「庶民のための車」が、「勝利を刻む機械」へと変貌した瞬間。
そしてその瞬間に、海外のファンやメディアは、それぞれの文化の言葉でフォルクスワーゲンに“もうひとつの名”を与えた。

1. “People’s Racer”──英国が贈った称号
英国車文化の中で、フォルクスワーゲンは長らく“実用車ブランド”として親しまれていた。だが、WRC(世界ラリー選手権)やダカールでの活躍が、ブランドイメージを一変させる。
英国のあるモータージャーナルは、フォルクスワーゲンをこう呼んだ。
“Volkswagen is the People’s Racer – ordinary blood, extraordinary speed.”
(フォルクスワーゲンこそ“人々のレーサー”だ──凡庸な血を、並外れた速さで駆らせる)
この言葉が象徴するのは、実用車としても使える車が、ラリーという過酷な戦場で勝利を収めるという“二重性”への賛辞だった。
普段の通勤、家族の買い物、週末のドライブ。そんな日常の背景に、いきなり“勝利”という文字が加わった時、車好きの心には熱いものが宿る。
英国では、この“People’s Racer”という異名がファンの間で自然に浸透していった。
2. “Desert Storm Chariot”──中東が描いた砂漠の戦士
中東地域、特にアラブ首長国連邦やサウジアラビアでは、フォルクスワーゲンの耐久/ラリーでの活躍が「砂漠を征する者」という印象を強く残した。
現地では“Desert Storm Chariot(砂嵐の戦闘馬車)”という呼び名が使われることがある。
砂と石と炎が揺れる過酷なステージを、フォルクスワーゲンはTouaregというSUVラリー車を通じて戦った。
砂丘で跳ね、岩場を蹴り、そしてフィニッシュラインを切る。
その姿は“人々の車”などという説明では収まらず、王族の領土を駆ける戦士のそれだった。
地中海を越えた旅人のように、砂の海を切り裂くフォルクスワーゲンに対し、現地ジャーナルはこう記している。
“When the sand storm rises, his wheels are already ahead.”
(砂嵐が立ち上る頃には、彼の車輪はすでに先を行っている)
この呼び名には、砂の中で勝利を刻んだ“走破性”と“耐久性”へのリスペクトが込められていた。
3. “Green Lightning”──北米が見た電動化の先駆者
近年、フォルクスワーゲンは電動レーシングカーで歴史的なタイムを叩き出した。例えば、ID.R がニュルブルクリンク北コースで量産車ベース電動車として驚異的な記録を打ち立てた。
この活躍により、北米の一部メディアでは“Green Lightning(グリーンの稲妻)”という呼び名が使われた。
“緑”とはEV/ハイブリッドの象徴、また“稲妻”とは電動モーターの瞬発力を示す言葉。
フォルクスワーゲンが「電動時代の走り」を体現した瞬間、アメリカの車好きたちはその姿を「緑色の衝撃」として記憶した。
この呼び名には、環境を配慮しながらも走りを捨てないブランド姿勢への敬意が込められている。
4. “Volksigen”──世界中から親しまれた異称
もうひとつ、少しユーモアが交じった呼び名がある。
“Volksigen(フォルクスィーゲン)”──“Volkswagen”に“engine(エンジン)”を掛けた造語で、主に米・欧のフォーラムやチューニングコミュニティで使われた。
この呼び名の背景には、フォルクスワーゲン車がエンジン載せ替え/チューン文化の中で“素材として優れていた”という事実がある。
特にゴルフGTI、ゴルフR、シロッコRなどが“ベースとして使われる”場面が多く、「Volks-engine」と揶揄されたのだ。
車好きの笑顔を誘うこの呼び名こそ、“人々の走り”と“改造の自由”を両立させたブランド文化の象徴だった。
終章:呼び名が語る“走りの信仰”
フォルクスワーゲンが世界で得た呼び名たちは、単なる愛称ではない。
それは、文化・歴史・技術・情熱が交わった地点で生まれる“称号”だ。
“People’s Racer”“Desert Storm Chariot”“Green Lightning”“Volksigen”──それぞれが異なる地で異なる意味を持ち、人々の心に刻まれた。
そして30〜50代の車好きにとって、これらの異名は「ただの車」ではなく、「共に体験した時間」の証でもある。
緑の稲妻が夜の峠を駆け抜けたとき、砂漠を越えて勝利した1台を見たとき、あるいはビートルの系譜をチューニングで蘇らせたとき。
その感覚が、呼び名とともに蘇る。
“人々の車”という出発点から、世界の舞台へ立ったフォルクスワーゲン。
そしてその進化を、名前をもって讃えた世界。
その物語は、あなたのハンドルとともにある。
車というものを超えて、呼び名という形で。
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